私は、くじ運がいい。
懸賞や抽選では、ありがたいことに当たりを引くことがある。
最近ではポテトクッション。ハガキ一枚でNintendoの目覚まし時計。一番くじは一発でB賞。
小学生の頃は、洋服店の三角くじ(500円)でハローキティのテプラ。
社会人になりたての頃は、どんぐりの森で一番でかいトトロのぬいぐるみ。
そして京都水族館では、一番でかいイルカのぬいぐるみ。
子どもがたくさんいる中、いい大人(しかも一人旅)が引き当ててしまい、カランカランとベルが鳴った。
恥ずかしかった。
ただ、「ほんとに当たり入ってるんだ!」という声も聞こえたので、子どもたちの希望にはなれたのかもしれない。
ところが、席ガチャとなると話は別である。
電車に乗る。指定された席に座る。隣にどんな人が来るかは、座ってみなければ分からない。
そして私は、どうもこの勝負に弱いらしい。
隣でギャルゲーが始まった
ある日の電車でのこと。
隣の人が携帯ゲーム機を取り出し、ゲームを始めた。
どうやらギャルゲーらしい。
もちろん、何を楽しもうと本人の自由である。私だって、他人に見せるつもりのない漫画くらい読む。
ただ、画面が見える。
見ようとしていなくても、視界に入る。
できれば、こういうものは本人だけで楽しんでいただきたい。
私も対抗して、なかなか刺激的なBL漫画でも開いてみようか。
そんなことが一瞬頭をよぎった。
いや、やらないけれど。
お互いの趣味は、お互いの画面の中にしまっておこうではないか。
課金すれば勝てると思った
席ガチャのリスクは、お金を払えば減らせる。
そんな話を聞いたことがある。
なるほど。それなら課金しよう。
いつもより少し高い、ゆったりした座席を予約した。大奮発!1時間の移動に約+2,000円!
しかも、通常なら2席並んでいるところ、隣に座席のない場所を選んだ。
車椅子を利用する方のためのスペースだったのかもしれない。
とにかく、私の隣には座席がない。
これなら完璧だ。
隣席が存在しなければ、隣席ガチャも発生しない。
ところが、乗車してみると、隣にはおじいちゃんがそびえ立っていた。
席はない。だが、人はいる。
しばらくして、係員さんがやってきた。
「切符はお持ちですか?」
「持ってない!」
なんと。
おじいちゃんは切符の買い方が分からなかったのだという。
その場で切符を購入し、別の席へ移っていった。
悪い人ではなかった。ただ、私の計算には入っていなかった。
隣席をなくすことには成功した。
隣人をなくすことには失敗した。
席ガチャ、奥が深い。
車内Microsoft 365展、開幕
そして今回。
電車に乗り、サンドイッチを食べていた。

隣の男性がノートパソコンを開く。
仕事をするらしい。
それ自体は珍しくない。私も移動中にパソコンを使うことがある。
ところが、しばらくすると隣から声が聞こえてきた。
もそもそ、もそもそ。
どうやらオンライン会議に参加している。
イヤホンから音が漏れているのだ。
しかも、途中で本人のマイクがオンになっていたらしいことまで分かった。
ガタンゴトン、ガサガサ、ガタンゴトン。
会議の向こう側には、さぞ臨場感のある鉄道サウンドが届いていたことだろう。
音の撮り鉄じゃないんだから。
さらに気になったのが、パソコンの画面である。
のぞき見防止フィルターは貼られていない。
メール、チャット、Excel、Word。
次々と画面が切り替わる。
車内Microsoft 365展、開幕。
パソコン上で繰り広げられる、展示の数々。
しかも、隣の私から普通に文字が読めてしまう。
私は通路側、彼は窓側。
窓の外を見ようとすればパソコンの画面が視界に入る。正面を向いても文字が目に入る。
ならば反対側を見ようか。
そこには別のおじさんがいる。
そちらばかり眺めているのも変だ。
困った。目の置き場がない。
見知らぬ人の仕事が分かってしまう
画面には、会議の予定や資料の確認、配布物の手配など、ごく普通の業務が映し出されていた。
ひとつひとつは、それほど重要そうには見えない。
ところが、資料が切り替わるうちに、断片的な情報が少しずつつながっていく。
ああ、だから先ほど人数を確認していたのか。
なるほど、あの資料はこの業務に使うのか。
……いや、待て。
なぜ私は、見ず知らずの人の業務の流れを理解し始めているのだ。
ついでに言えば、彼が何の仕事をしているのかまで、だいたい見当がついてしまった。
最初は迷惑だと思っていた。
しかし、途中から少々面白くなってしまったことも否定できない。
人間の好奇心とは恐ろしい。
もちろん、実際に機密情報が漏れたのかどうかは分からない。
ただ、特別なことをしなくても、隣に座っているだけでこれほどの情報が見えてしまう。
それは、なかなか考えさせられる光景だった。
なぜか私の肩が凝る
当の本人は、淡々と仕事を続けている。
一方の私は、画面を見ないようにしたり、イヤホンから漏れる声を気にしたり、視線の逃げ場を探したり。
気づけば肩が凝ってきた。
なぜ情報を見せている人より、見えてしまう人の方が気を遣っているのだろう。
そのうち、私もパソコンを開いてブログを書きたくなった。
しかし、なんとなく開きづらい。
自分の画面も、隣から同じように見えてしまうのではないか。
そう思うと、少し気が引ける。
隣の人は平然と仕事をしているのに、こちらは画面の角度を気にしている。
なんとも不思議な構図である。
ちなみに、この日のサンドイッチは完食した。
味は覚えていない。
ハッカーはいなかった
近頃、サイバー攻撃や情報漏えいのニュースを耳にする。
情報セキュリティというと、複雑なパスワードや高度なシステム対策を想像しがちだ。
しかし、今回の出来事に特別な技術は必要なかった。
パスワードを破ったわけでもない。
不正なソフトを使ったわけでもない。
ただ、隣に座っていただけ。
それだけで、見知らぬ人の仕事の一端が見えてしまった。
ひとつひとつは何でもない情報でも、組み合わせれば、思いがけないことが分かる場合がある。
公共交通機関でパソコンを使うなら、画面の角度や表示する内容、イヤホンの音量、マイクのオン・オフには気をつけたい。
もちろん、見えてしまう側も、むやみにのぞき込まないようにしたい。
これは自戒を込めて。
本日の教訓
席ガチャには、なかなか勝てない。
ギャルゲーに出会う日もあれば、課金した席の隣におじいちゃんが立っている日もある。
そして、見知らぬ人のオンライン会議に、意図せず立ち会う日もある。
隣にどんな人が来るかは選べない。
けれど、自分がどんな隣人になるかは、ある程度選べる。
画面は周囲から見えないように。
音漏れにも気をつけて。
そして、見えてしまった画面は、できるだけ見ない。
みんなも気をつけよーねー!
そんな私は今、この記事の当事者の真隣で、この文章を書いている。
彼は、まだ気づいていない。
……さて。
私の画面は、大丈夫だろうか。


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