中学生の頃、誕生日プレゼントに何が欲しいか聞かれて、私はこう答えました。
日本語大辞典。
ゲームでも服でもなく、辞書です。

当時の価格、7,573円(税別)。
今思うと、なかなか渋い中学生だったと思います。
家族からは、
「は? やっぱあんた変わってるわ」
と言われました。
ごもっとも。
きっかけは、教室に置いてあった辞書
中学校の各教室には、日本語大辞典が置いてありました。
辞書なんて、誰も見ないと思うじゃないですか。
ところが私には、本の虫というか、活字中毒というか、やたら本を読む友人がいました。
休み時間になると、その友人と一緒に日本語大辞典をめくっていました。
これが意外と面白い。
調べたい言葉があるわけでもないのに、ぱっと開いたページを眺める。
目についた言葉を読む。
そこから、また別の言葉が気になる。
そんなことをしているだけで、結構ためになります。
ちょうどその頃、誕生日プレゼントに欲しいものが特に思いつきませんでした。
それなら、ずっと使えそうなものがいい。
母がよく「本は財産」と言っていたこともあって、日本語大辞典を買ってもらうことにしました。
ただ言葉を調べるだけの辞書ではない
日本語大辞典は、とにかく分厚い。

もちろん言葉の意味を調べる辞書なのですが、それだけではありません。
写真や挿絵、図版が多く、なんとなくページをめくっているだけでも楽しめます。
調べものをするために開いているのに、途中でまったく関係のない言葉に引っかかることもしばしば。
効率はよくありません。
でも、その寄り道が面白い。
私にとっては、「調べる道具」というより、読んで楽しめる本に近いところがあります。
そして個人的に好きなのが、巻末付近。
ここに、私好みの情報がぎゅっと詰まっています。
たとえば、手紙の書き方。
時候の挨拶や例文、手紙の構成などがまとめられています。
ほかにも、日本の伝統模様や色名の解説など。
辞書を開いたはずなのに、気づけば言葉以外のところを延々読んでいます。
ネット検索で行き詰まったときの味方
今は、言葉を調べるだけならネット検索の方が圧倒的に早いです。
スマホで検索すれば、数秒で答えが出てきます。
それでも、日本語大辞典を手放そうとは思いません。
ネット検索にはない良さがあるからです。
ネットでは、知りたいことを入力して、必要な情報だけを取り出すことができます。
一方、紙の辞書では、目的の言葉の前後まで自然と目に入ります。
写真や図版があれば、そこでも立ち止まる。
目的とは関係のないページで手が止まることもあります。
効率だけを考えれば、完全にネットの勝ち。
でも、必要な情報だけではないものまで拾えるのが、紙の面白さです。
大切な手紙を書くときほど、頼りたくなる
特に今でも頼りになると思うのが、手紙の書き方です。
手紙を書く機会そのものは、昔よりずいぶん減りました。
メールやLINEで済むことがほとんどです。
だからこそ、現代でわざわざ手紙を書く場面というのは、むしろ大切な場面が多いのではないかと思います。
ずっと前、友人への結婚祝いの文面を考えるため、ネットで例文を検索したことがありました。
すると、かなり大手のサイトなのに、結婚祝いでは避けた方がいいとされる重ね言葉が使われていました。
しかも検索して出てくる例文は、どれも似たり寄ったり。
なんとも言えない気持ちになりました。
そんなときに日本語大辞典を開くと、時候の挨拶や文章の組み立て方までまとまっている。
ネットで行き詰まったとき、本当に助かりました。
もちろん出版された時代によって、今とは表現や慣習が変わっている部分もあると思います。
それでも、「何をどう書けばいいのか」という基本は大きく変わらないのでは。
当時7,573円。よく買ってもらったなと思う
改めて価格を見ると、7,573円。

中学生の誕生日プレゼントとしては、なかなかの金額です。
よく買ってもらったものです。
でも、その日本語大辞典は今も手元にあります。
毎日使うわけではありません。
一年に何度開くか、と聞かれれば、そんなに多くはない。
それでも、必要なときには引っ張り出す。
買ってもらってから何十年も経っていることを考えると、すごく良い誕生日プレゼントでした。
本当に欲しかったものより、長く残った
子どもの頃に、ものすごく欲しくて買ってもらったもの。
当時はすごく本気でしたが、意外とすぐに飽きてしまったり、年齢とともに使わなくなったり。
ところが日本語大辞典は違いました。
「絶対これが欲しい!」
と熱望したというより、
「誕生日、何が欲しいかな。これならずっと使えそうだし、いいかも」
くらいの気持ちで選んだもの。
それが結果的に、何十年も手元に残っています。
長く残るものって、買ったときには案外わからないものですね。
ちなみに調べてみたら、今は絶版のようで、中古でしか見かけませんでした。


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