影絵が好きだと思っていた。|暗闇に浮かぶ光のこと

照明を消した部屋のカーテンに、星型の光がいくつも浮かんでいる様子 余話
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物心がついた頃には、家の本棚に『モチモチの木』がありました。

たぶん、母が買ったものだと思います。

私は、この本の表紙が怖かった。

怖いなら見なければいいのですが、なぜか気になる。

本棚にある『モチモチの木』を、しばらく眺めていた記憶があります。

しばらくと言っても数日ではなく、たぶん数か月とか。

表紙を見る。

怖い。

また見る。

何をしていたんでしょう。

本自体もたぶん読んでいますが、内容よりも表紙の印象のほうが強く残っています。

好きだったかと聞かれると、よく分かりません。

怖いけど、気になる存在でした。

小学生のころ、切り絵をしていた

小学生のころ、切り絵をしていた時期があります。

授業がきっかけだったような気もしますが、そこは曖昧。

学校全体で流行っていたわけではなく、クラスの中でも私と数人くらいだったと思います。

先生がいくつか図案を持ってきてくれて、それを切っていました。

丸い持ち手のついた切り絵用のカッターも、自分用に買ってもらいました。

学校の休み時間にやっていたわけではなく、家に帰ってから作業していた記憶があります。

そのとき作ったもののひとつが、オレンジ色の画用紙で作った椿。

普通の作品です。

卒業制作でも、何かの賞を取った作品でもありません。

ただ、私はこれを切るのに失敗しました。

そして、失敗した部分をどうにかするのではなく、台紙に少し斜めに貼りました。

切り絵本体から視線を逸らす作戦です。

《オレンジ色の椿・証拠隠滅済》

小学生、姑息。

でも今考えると、このころには切り抜いた形や、その輪郭を見るものが好きだったのかもしれません。

この時点では、まだ光は出てきません。

中学生になると、光が入ってきた

中学生の授業では、黒い画用紙を切り抜いて、その裏に色のついたセロファン紙を貼るものを作りました。

何を作ったのかは覚えていません。

でも、完成した作品をどこに飾ったかは覚えています。

渡り廊下の窓です。

これが綺麗だった。

日光がセロファン紙を通って、時間帯によっては色のついた光が地面に落ちたり、壁に落ちたりしていました。

肝心の自分の作品がどんな図柄だったのかは、まったく出てきません。

なのに、窓に並んだ作品と、そこを通った光は覚えている。

記憶というのは、残すところがよく分かりません。

20代前半、影絵美術館へ

社会人になってから、一度だけ影絵美術館に行ったことがあります。

場所は長野県の白樺湖。

最初はどこの美術館だったのかも曖昧だったのですが、調べてみたら「世界の影絵・きり絵・ガラス・オルゴール美術館」だったようです。

そうそう。

諏訪湖の御神渡りを見に行ったときに寄ったんだった。

ここまで思い出すのに、まあまあ時間がかかりました。

美術館の展示内容も、細かいところはほとんど覚えていません。

でも、展示室に入った瞬間のことは覚えています。

暗い室内に、光と色が浮かんでいて。

なんだここ。綺麗だな。

そんな感じだったと思います。

作品は忘れているのに、空間だけ覚えている。

そして、星のカーテン

今の家には、星形にくり抜かれたカーテンがあります。

このカーテンを最初に見たのは、以前通っていたオイルマッサージのお店でした。

お店では窓ではなく、間仕切りのような使い方をしていました。

それを見て、

これ、いいな。

と思った。

その後、自分の家では窓に使っています。

昼間になると、星形の穴から光が入ります。

このカーテンについては、以前ブログにも書きました。

でも買ったときも、記事を書いたときも、影絵美術館とはまったく結びつけていませんでした。

今回、影絵のことを書こうとしていて、

あれ。

これも同じでは?

となりました。

今さらです。

バラバラだった記憶を並べてみる

『モチモチの木』。

小学生のころの切り絵。

セロファン紙を貼った黒い画用紙。

影絵美術館。

星のカーテン。

時期も違うし、それぞれに出会った理由も違います。

自分の中でも、今まで全部バラバラの記憶でした。

でも並べてみると、なんとなく似ています。

どうも私は、単純に明るいものが好きなわけではなさそうです。

暗いところに、光が浮かぶ。

何かに遮られた光が、隙間から入る。

黒の中に、色が出てくる。

そういうものを、何度も「いいな」と思っている。

私は影絵が好きなんだと思っていました。

でも、少し違うのかもしれません。

私が好きなのは、暗闇に浮かぶ光なのかもしれない。

もう一度、見に行きたいな

最初に影絵美術館へ行ったのは、20代前半。

あれからずいぶん経ちました。

暮らしも変わったし、ものを見る自分も少しは変わっていると思います。

記憶の中の影絵美術館は、今でも幻想的な場所です。

でも、本当に今見ても同じなのか。

ちょっと、答え合わせをしてみたい。

もう一度、見に行きたいな。

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