「桃さん、ナス持ってく?」
先日、大量にいただいたナスを、茅乃舎の公式レシピでおいしく消費した話を書きました。
そもそも、なぜ一人暮らしの我が家に大量のナスがあるのか。
職場ですれ違うと、聞かれるのです。
「桃さん、ナス持ってく?」
もはや合言葉のようになっています。
ありがたい。
とてもありがたい。
ただし、私は一人暮らしです。
そして、それは毎回伝えています。
それでも、渡されるビニール袋はだいたいパンパン。
ときにはコンテナにナスがどっさり入っていて、「ご自由にどうぞ」方式になっていることもあります。
しかもビニール袋まで用意されて。
前回いただいたナスをまだ食べ切っていないうちに、次便が到着することも。
田舎のおすそ分けは、どうやら一人暮らしという単位では計算されていないようです。
「ちょっと持ってく?」の「ちょと」とは
やってくるのは、ナスだけではありません。
同じ方から、トマト、赤や黄色のミニトマト、とうもろこしなどをいただくこともあります。
(こっちは家庭菜園っぽい。)
ミニトマトに至っては、実になるのを待たず、
苗から来ました。
「育ててみる?苗、余ってるんだよね。」
(苗って余るものなんだ…)
と、まさかのセルフサービス方式です。

旬になると、野菜は一気に採れます。
農家の親戚から出荷できないハネものがたくさん回ってくることがあるようで、「捨てるくらいなら誰かに食べてもらおう」ということなのだと思います。
こちらとしても、新鮮な野菜をいただけるのは本当にありがたい。
形が少しくらい不揃いでも、家で食べる分にはまったく問題ありません。
問題があるとすれば、ただひとつ。
一人暮らしに対して、供給量が強い。
ちょっとは、量ではなくは気軽に遠慮せずの意味な気がしてきた。
春には、筍がやってきた
春には、
「桃さん、たけのこ食べる?」
と聞かれました。
筍!
食べます。
食べたいです。
ただし、筍にはひとつ大きな問題があります。
下処理が面倒くさい。
そこで冗談半分、本気半分で、
「食べます! でも煮るのやだから、煮たのちょーだい」
と言ってみました。
我ながら、なかなかのわがままです。
ところが後日。
本当に煮た筍がやってきました。
「ぬかで煮るのは匂いがつくから嫌いで、水だけで煮たから傷むの早いよ。早く調理してね」
という説明付き。
どうやらこのおすそ分けルート、下処理にも対応しているらしい。
ありがたく受け取り、私はかつお節と砂糖、醤油でシンプルに煮ていただきました。
面倒なところを人にお願いしておいて、最後だけ料理した顔をしています。
ときどき、完成品までやってくる
素材だけでなく、完成したものをいただくこともあります。
鮎の甘露煮や、伽羅蕗。
どちらも味がしっかりしているので、我が家では酒の肴になりました。
こういう、自分ではなかなか作らないものは特に嬉しい。
旬のものを採って、下処理をして、時間をかけて料理して。
そう考えると、食べ物そのものだけではなく、その人がかけた手間まで分けてもらっているような気がします。
そう思うと、酒もよりおいしい。
ありがたくいただきます。
おすそ分けルートは、一つではない
もちろん、いただきものは一人の方からだけではありません。
別の方からは、桃をいただきました。
「どこに行ったの?」「誰と行ったの?」
なんて話をしながら、お土産話までセットでやってきます。
その桃は、せっかくなのでカルダモンと一緒にコンポートにしました。
また別の方からは、
「家のが生りすぎて消費できないの!」
と、大量のブルーベリー。
いちごの季節の終わりには、摘み切り作業で採れた完熟いちごがやってきたこともあります。
さすがに全部すぐには食べられないので、こちらは冷凍庫へ。
そして、手打ち蕎麦をくださる方もいます。
これが趣味の域をだいぶ越えている。
全国へ蕎麦の研究に出かけたり、蕎麦打ちの大会に参加したりするほどで、いただく蕎麦もお店で出てきてもおかしくないくらい。
蕎麦と一緒に、旅先のお土産までやってくることがあります。
蕎麦というと信州のイメージが強かったのですが、最近は北海道へ行ったそう。
いただきものには、ときどきその人の得意なものや、旅の思い出まで一緒についてくる。
スーパーで自分で選んで買うのとは、また違う楽しさがあります。
会議中にも、不意にやってくる
ここまで季節の食べ物の話をしてきましたが、季節とはまったく関係なくやってくるものもあります。
ある日、ホテルで会議をしていました。
小休憩のとき、知り合いから突然渡されたのが、
いちご牛乳1リットル。
ありがたい。
いちご牛乳も好きです。
ただ、ひとつ問題があります。
要冷蔵です。
そして私は、ホテルで会議中。
しかも会議が終わったあと、おそらく飲みに行く。
さて、どうしよう。
ホテルの方に、
「すみません、このいちご牛乳を冷やしておいてください」
とお願いする?
いや、なんか違う。
ふと会議室を見ると、お水を飲むためのグラスが置いてありました。
……これ、配ればいいのでは?
ということで、
会議室でいちご牛乳の配給が始まりました。
無事、みんなのお腹へ。
1リットル問題、解決です。
お返しは「味見にどーぞ」、いちごにはいちごで
いただきものをくださる方は、年上の方が多いです。
そして大体、
「お返しなんていらないから」
と言われます。
毎回きっちり金額を考えて返すのも、かえって相手に気を遣わせてしまいそう。
なので私は、毎回お返しをすることはありません。
その代わり、自分が食べておいしかったものがあると、ときどき渡します。
例えば、コストコで買ったbibigoのチヂミ。
「これおいしかったんで、味見にどーぞー。」
と。
「ご飯作るの面倒なときとか、一品足りないときにも簡単で良いですよ。混ぜて焼くだけ!ニラ足してもいいし。」
なんて、食べ方まで勝手に付け加えます。
お返しというより、
自分がおいしかったものを、次の人にも回す。
金額を合わせる贈答ではなく、このくらいの緩いやり取りが私には心地よいのです。
さて。
例の1リットルいちご牛乳にも、何か返したくなりました。
お昼休みにコンビニへ行って、何か面白いものはないかなと探します。
そこで目に入ったのが、菊正宗。
パッケージの色が、なんとなくいちごっぽい。
おしゃれすぎて、
「私、いちご味ですよ」
みたいな顔をしています。
もちろん、日本酒です。
「いちごのお返し、いちごです」
みたいな顔をして渡しました。
なかなか日本酒だと気づいてくれません。
もちろん、
「冷やして家で飲んでね!」
までがセットです。
これで一件落着。
……と思ったら、後日の暑気払い。
今度は向こうから、
いちご牛乳500ml & あの菊正宗
のダブルセットが帰ってきました。
「1リットル探したんだけど、何軒か回っても売ってなくて。500でごめんね!」
そこじゃない。
もはや、何がお返しで何がお返しのお返しなのか分かりません。
こういうくだらないやり取りも含めて、私は結構好きです。
スーパーより先に、季節がやってくる
春には筍。
夏にはナス、トマト、とうもろこし、桃。
鮎や、たくさん採れた果物がやってくることもあります。
スーパーで野菜売り場を見て、
「そろそろ旬なんだな」
と思うより先に、
「桃さん、これ持ってく?」
と誰かが季節を持ってきます。
もちろん、一人暮らしなので困ることもあります。
「またナスだ!」
となることもあります。
でも、いただいたものを無駄にしたくなくて、どうやって食べようか調べる。
普段なら作らなかった料理を作ってみる。
大量のナスから、茅乃舎のレシピを試したのもそう。
いただいた桃を、カルダモンと一緒に煮てみたのもそう。
考えてみると、私の暮らしには、いただきものから始まったものが結構あります。
自分で予定して、自分で選んで買ったものだけではない。
誰かから突然やってきたものに、
「さて、これをどうしよう」
と考える。
そこから一品できたり、新しい味を知ったり。
食べ物と一緒に、季節や人の思い出が暮らしの中へ入ってくる。
それも、なかなか悪くありません。
一人暮らしだと、毎回伝えています
一人暮らしだと、毎回伝えています。
たぶん、これからも伝えます。
そしてたぶん、次も袋いっぱいの何かを渡されるのでしょう。
すぐに食べ切れないものは、
「これ、冷凍できるのかな?」
と調べます。
調べてみると、意外といろいろ冷凍できます。
そして安心して冷凍していると、
今度は冷凍庫がパンパンになります。
一人暮らしと大量のおすそ分け。
この戦いは、まだしばらく続きそうです。
それでも、「いらない」とはなかなか言えません。
今年も、誰かが運んできてくれる季節を、おいしくいただこうと思います。
ただし。
ナスは、前回分を食べ切ってからお願いします。
冷凍にもあまり頼れないので、特に。
嬉しい悲鳴です。


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